2013 年 5 月 のアーカイブ

2013 年 5 月 15 日

変化

田房絢子

 先日、久しぶりに友人と会いました。子どもを産んで数ヶ月経ってからの再会。前回会ったのは臨月で大きなおなかをしていました。無事に一仕事終えた彼女はどんな様子なのか、ちょっと心配だったのですが元気な様子。あの頃からは想像もできない立派な母の姿でした。

 彼女とは中学校が一緒で、同じグループに属していました。「グループに属する」と銘打ってしまうとなんだか変な感じがしますが(笑)。あの時にしかできないことを共有し、悩んでは笑い、喜んでは落ち込んでいた、ジェットコースターのような時代を一緒に過ごした友人たち。そんな密な時間を過ごしたにも関わらず、卒業後には会うことなく二十代半ばを迎えました。そのほかの友人も同じです。高校に進学したり、大学に進んだりと環境が変わっていく中で、少しずつ疎遠になっていきました。

 ある日一本の電話が実家にかかってきました。聞くと卒業アルバムに載っている仲が良かった友だちの電話に片っ端からかけているとのこと。その時は遠方に住んでいたのですが、たまたま実家に帰っていて、それこそ奇跡というか運命というか私のその後を大きく変える一本の電話になりました。すぐに会いにいき、感動の再会を果たし、その後も突然の電話を鳴り響かせながら、彼女を含めた懐かしい仲間を増やしていきました。

 それからおっきなグループになった私たちは月に1度くらいのペースで会っては朝まで大騒ぎでした。懐かしい友人に会えたこと、あの頃に戻ったかのような感覚、そしてジェットコースターのような楽しさを共有できたこと。本当に本当にすばらしい時間を過ごしました。大人になった私たちが、ほんのつかの間でも少年少女の気持ちを取り戻せたような感覚がきっと新鮮だったのだと思います。今でもあの楽しさは私を元気づけてくれます。

 それからはまたグループが形を変え、少しずつ小さくなりながら今の形になりました。彼女はその今の形の友人のひとりです。母になることなんて想像もしなかった中学生の頃。母になることを望みながらもまだその時でなかった二十代。そして今、私たちは三十代も半ばになりました。考え方や気持ちの動き、自分がいる状況、いろんなことが変化してきました。変化は時に自分を苦しめますが、その変化があるからこそ楽しめることのほうが多いと思います。変化に対応する力をつけていくことが、大人になっていくことなのだとも思います。そしてその変化を振り返り共有できる友人がいることは、本当に大切なものだと思いました。母になった友人を見て、改めて気付きました。

 これからまた10年20年と、様々なことが私のまわりで起こっていきます。友人たちともその形や距離を変化させながら、また新しい形になっていくのだと思います。だって「人間はいきもの」ですから。そして、その変化をいつまでも楽しめるような大人でありたいと思います。

2013 年 5 月 8 日

だんしゃりと思い出

桑名八重

「断捨離」とのことばがちらほらと流行って久しく。 あんまり自分には関係ないと思ってきた。 しかし、突如自分にも関係のあることばになってしまった。

家庭の事情により、家の中の不用品を整理しよう!となり、
家を出ている兄弟たちも時間を作っては納戸から押入れから大捜索。

それぞれに「もうだいぶ処分したし、実家にはのこってないはずなんだよな~」
と言いながらも色々なものが発掘されました・・・。

高校時代の制服にジャージ。小学校時代からの教科書にノート、成績表、お土産でもらった雑貨・・・。
「よくこんなの取っておいたなぁ。」というよりも、
「人生ずいぶん色々なものにお世話になっているなぁ」
という実感。

ゆっくり見始めたらきりが無いので、思い出話に突入してしまう前に
「捨てる」「残す」を決断。
私たち兄弟は結構簡単に決めていくけれど、親はなんだかんだと云いながら残そうとする。

「そんなもん、とっといてどうすんの・・・」
兄弟全員でそんなつぶやきを飲み込みながら、一応親の意向に沿いながら作業。

結局残したものは、アルバムの一部や成績表の一部など。
あとは、思い切りよく持ち主が責任を持って処分の決断をすることで決着した。

久々に兄弟で作業をして、沢山の「モノ」を廃棄という結果に(一部はリサイクル)。
けれど、随分いろいろな思い出話に花が咲いた。
共通の思い出がたくさんあるのっていいなと改めて思う。

自分の部屋にはまだ整理途中のものがたくさんあるけれど、
結局必要なものはあまりないということも再認識した。

家族の思い出、自分の歴史。
どんな形で残すにしろ、シンプルに自分を見直すよいきっかけだった。

2013 年 5 月 1 日

ショートショートの物語

高村さとみ

 新学期が始まって早半月。4月の慌ただしさも段々と落ち着き、フリースクールの生徒たちもようやく日常を楽しむ余裕がでてきました。

新学期最初の国語の授業で私がよく取り上げる本があります。それは星新一さんのショートショートの作品です。星新一さんは「ショートショートの神様」と呼ばれるSF作家です。先日授業で取り上げたのは「おーい でてこーい」というわずか6ページの作品。突然現れたふかーい穴。人間はその穴を有効に使おうと都会のゴミをどんどん捨てて街を発展させていきますが、ある日最初に捨てたはずの石ころが空からふってきて…。物語はここで終わってしまいます。生産するばかりで後の地球環境のことを考えない人間のことを皮肉った作品です。他にも全てをロボットに任せるようになった街の話や不思議な新薬を開発した博士の話など、私が生まれる前に書かれた作品とは思えないほど今の社会を鋭く風刺しています。一つ一つの文が短く読みやすいのも魅力的です。

 スマートフォンやタブレットなど最近は本当に便利になったなぁと感じています。私は方向音痴なので、スマートフォンで地図を見ながら歩くことは日常茶飯事です。ちょっとした文章を書きたいときにタブレットを利用することもあります。そんな便利な社会の恩恵を受ける一方で、ふと考えることがあります。TwitterやFacebook、LINEなど手軽に世の中とつながりを持ててしまう現代ですが、人と直接会ってつながるということをこれまで以上に大切にしたいということです。SNSを通じて知り合うことができた方たちがたくさんいますが、その便利さに甘えず人との出会いを大切に、顔を合わせて笑いあえるような関係を築いていきたいと改めて思うのです。今年度もあるであろうたくさんの人たちとの出会いを今から楽しみにしています。