2016 年 8 月 のアーカイブ

2016 年 8 月 24 日

先をつなぐ物語

三和高校 渡辺莉卯

今年3月、まだ私が三和高校に来る前のこと、ある朗読のコンテストに出場する機会があり学生最後の思い出に何かがしたいという,またいつもの私の「なんとなく」で参加した。高校生以上であれば自由に参加できるこのコンテストでは、約60名もの参加者でのテープ審査を経て20名が選出され、その後本選へと駒を進める。私は高校時代放送局に所属していた経験のおかげもあり、なんとか本選に進み入選することができた。

さて、この時私が読んだ原稿の一つが、サン・テグジュペリ作の「星の王子さま」である。

読んだことはなくても、題名を聞いたことがある人も多いだろう。私がこの小説を初めて読んだのはまだ小学生の頃だった。その時の感想を一言でいうと、「静かなお話だな。」だったように思う。

王子さまはある時、幸福そして愛とは何かという答えを探しに、自分の星とずっと大切に育ててきたバラに別れを告げて旅に出る。色々な星での様々な個性的な人たちとの出会いを通して、生きること、愛し愛されることについて考えていく物語だ。

1943年に初版が発行されて以来、今でも200以上の国と地域で読まれ続けているこの物語は、児童書でありながら、子供の心を失った大人に向けての作者のメッセージが多く詰まっている作品だ。当たり前なこととはわかっているつもりでも、改めて言葉で言われると思わずドキッとしてしまうような台詞も多くある。生徒にも、ぜひ一度読んでほしい一冊だ。

「人生に解決方法なんてものはない。あるとしたら、前に進んでいくことだけだ。前に進めば、解決法はあとからついてくる。」

自分がやっていることが本当に正しいのか自信がなかったり、そもそも何が正しくて何が間違っているのかわからなかったり、もしかしたらはっきりとした答えが欲しいというわけでもないのかもしれない。毎日色々なことをぐるぐると考えて悩んだりすることが多くても、とにかく今できることを少しずつ頑張っていく。そうすればいつか先の自分につながってくるのだろうと、そんな風に感じられた。

2016 年 8 月 16 日

「お盆」という伝統行事

「お盆」という伝統行事

亀 貝 一 義

昔からお盆行事がある。この基本になっているのはお寺参りとお墓参りだ。私のウチには墓はない。しかし半世紀以上つきあっているお寺がある。先祖伝来、わが家は「浄土真宗」の信徒。これもお西(おにし・西本願寺系)とお東(おひがし・東本願寺系)の二つがあるのだが、今のお寺(これをその昔「檀家寺」と言った)はお西みたいだ。こまかいことはどうでもいいと思っている。

今年も子どもや孫たちもいっしょにお寺参りをした。妻の方のお寺もあるから、このふたつに仁義をつくそうとするから大体一日かかる。それでも、お寺の仏壇をきれいにして花をかざり、心ばかりのお供えをして合掌するとなんとなく亡き先祖(さし当たりは私の父と母)に対してご無沙汰を謝り、これからも一家の無事を天から見守っていてくれるのではという気持ちになってほっとする。

お盆はそういういわば宗教的な意味をもつ行事の他に、日頃つきあう機会がない親戚と一年ぶりに会って、お互いの無事を祝いこれからの一年を約束する行事でもある。
このような機会をつくってくれたお盆という行事にささやかな感謝をする。また、一年ぶりに会った坊さんにお経をあげてもらうのだが、あいかわらずお経の意味が分からない。お寺としては一番忙しい時だから、短いお経だ。それでもお布施を5,000円包む。駐車場が満タン。

記念写真を撮って「じゃまた一年後」、といって別れる。そういう出会いと元気を確認しあうことのできるお盆が今年も終わった。一年後のこの機会にも誰ひとり欠けることのないことを心の中で祈りつつ。

2016 年 8 月 16 日

新しいことを習う

本間 香菜 

 先日、友人と和菓子制作体験をしてきました。

 職人さんが用意してくれていた、色がついた"ぎゅうひ"の入りの餡の中心に餡玉を入れて丸くし、形を作ります。今回は3つの花の練りきりを作りました。

IMG_7125.JPGのサムネイル画像

 最初に作ったのは、梅の花(赤)。色のついた餡に餡玉を上手に入れること、道具の使い方など、練りきりづくりの基本を教わりました。次に作ったのが菊の花(黄)。この時は、梅で習ったことを応用し丁寧に作りました。制作の間にも職人さんは、関西と関東の練りきりの違いや和菓子作りの道具の話などのお話をしてくれ、私たちの知らない和菓子の世界を教えてくれました。
 3つ目の紫陽花(青)では、花びらの色が白とのグラデーションとなるように作る方法を習いました。これは、少し難しく、苦戦しながらもなんとか職人さんの作るような形に似たものをつくる事ができました。

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 自分で作った和菓子たちは、ちょっと偏った形になりましたが、我ながらとても愛おしい素敵な花になったように感じました。この約1時間程度で、3つものお菓子を作り、最後には少し難しい花を作ることができたことで、まるで職人さんの長年の技を手に入れたような気分でした。笑


 職人さんのお話を聞いていると、この制作体験も、修学旅行の学生などを相手に長くされているそうで、長年の経験からできた職人の技の1つであるのかな、と感じました。「短い時間で、和菓子を作る楽しさを習い、達成感を得る事ができる」私もこんな楽しい授業をしたいなぁ・・・私の職人への道もまだまだだな・・・!!

 と、ふと考えた1日でした。

2016 年 8 月 2 日

はぁ~るばる振り返る旅

フリースクールスタッフ 新藤理

夏休みが始まった。
イベント盛りだくさんで駆け抜けた一学期を振り返りながら、少しゆったりした気持ちで新たな日々に向かおう...そう思いつつ、気持ちはすでに次の大イベントに向けて忙しい。夏休みが明けてすぐに出発する、フリースクールの修学旅行のことだ。
今年は函館で三泊四日の旅行を行うことになった。函館で三泊すればかなりじっくりと時間をかけて名所をめぐることができる。グループごとの自主行動にも時間を多く割いて計画が進められている。彼らが函館市内を試行錯誤しながら(?)動き回っている時、スタッフはどうやって彼らにちょっかいを出そうか。そんなことを考えながらウラ計画を立てるのは実に楽しい。私たちだけ、気持ちはすでに「♪はぁ~るばる」来ている感がある。

函館での修学旅行は二回目となる。前回の函館旅行はかれこれ四年前のこと。

当時のフリースクールは現在に比べて在籍する生徒がかなり多かった。中学生集団なのに出で立ちは妙に大人っぽく、男子と女子は常にホレタハレタで泣き笑い、それなりの頻度で悪さをはたらき、でもそんな中で無邪気な小学生たちが可愛がられている、不思議な集団だった。
はっきり言ってそんな彼らを修学旅行に連れて行くのはかなりの重労働だ。当時の資料をひもとくと「誓約書」なる書類が出てくる。
・飲酒、喫煙、暴力行為、その他の非行を行いません。
・夜中にホテルから無断で外出しません。
・夜の就寝時間以降、とくに異性の部屋との行き来をしません。
交わすまでもないと思われそうなこれらの約束を、あえて書面にして誓わせる必要がこの頃はどうしてもあった。
今年の修学旅行に向けては、そのような「誓約書」は用意していない。きっと生徒たちに中身を見せれば「え、こんなの守るのが当たり前だよね...?」とびっくりするだろう。四年前と現在では、端的に言えばそういう違いがある。

そんな四年前の修学旅行中に起きた、今でも忘れられない場面。
ある男子生徒の言動に、何人かの友人たちが腹を立てていた。自己中心的で、話すことの真偽も疑わしいというのだ。「ちょっともう我慢できねえ。部屋にあいつ呼びだすべ」と漏れ聞こえてきた声に、私は待ったをかけた。そんなふうに頭に血が上った状態では解決にはならない、どうしても話したければスタッフを立ち会わせるように、と指導した。納得いかない様子の彼らがその後集まってどんな話をしたのかはわからない。一時間後、血を上らせていた彼らがあらためて私の所にやってきた。さっきとは表情が違う。
「新藤さんの言うこともわかる。さっきのオレたちは確かにちょっとまずかった。でも、なんであいつと話したいかって考えたら、苦情を言いたいとかこらしめたいとかじゃなくて、この先仲良くやっていきたいからなんだよね。そしてできればオレたちの中で始まったことだからオレたちで解決したいっていうのもあるし...それでも新藤さんが任せられないって言うんならあきらめるけど、もしよかったらオレたちを信じて、やっぱりあいつと話させてくれないかな」
さすがに真っ正面からこう来られては、私も彼らを信用するしかない。ありがとうございます!と安心した様子の彼らは、あらためて件の男子と話し合ってきた。後で聞くと、途中から冗談も飛び交うような、それでもお互いの気持ちを正直に確かめ合える、いい時間だったという。「オレがそんなふうにみんなにイヤな思いさせていたなんて気づいてなかった。これからは気をつける」と、ひとまずその場は丸く収まったらしい。
もちろん、それだけですべてがいい方に転がるような甘い現場ではない。激動の一年はまだまだ続く。その後もいろいろな事件が起きた。「旅立ちのつどい」の前日まで事件は起き続けた。ああ、思い出すと今でも頭が痛い。でも、不思議となつかしい。

しばらく前、当時一番いろいろとやらかしてくれた男子に偶然会った。高校でも平穏無事な日々ではなかったけど、何だかんだで大学に合格し、新生活を迎えようとしているという。
「あの頃のこと考えたら、スタッフのみなさんにホント頭上がんないです。なんか恩返しっていうか、これから学園のために何か役に立てたらいいなーって思いますね」
殊勝な言葉を贈ってくれる彼は、函館で語り合ったあれやこれやを今でも覚えているだろうか。

さあ、またまた行くぜ函館~。今年は何が起こるかな。誓約書はないけど、とにかくお互いを思いやりながら楽しい旅行にしようねとだけ強く約束して、手作りの「旅行のしおり」とにらめっこする時間がもうほんの少し続く。