寄付募集への思い(新藤理)

寄付募集への思い

【いつか戻るもののために ~寄付募集活動によせて~】


 

NPO法人フリースクール札幌自由が丘学園
理事 新藤理

 

いつもフリースクール札幌自由が丘学園を応援していただき誠にありがとうございます。

 

思想家の内田樹氏は、2007年の講義をまとめた著書『街場の教育論』の中で「教育はビジネスではない」と断言し、教育や学校がグローバル資本主義に絡めとられることへの警鐘を鳴らしました。教育基本法改正や教育再生会議による改革などが一気に進んだ当時、こうした反発は少なくなかったと記憶しています。しかし、当時の予想をはるかに上回る速度・強度で、教育に市場原理が根付き始めているというのが私の実感です。不登校をめぐる状況についても例外ではありません。試しに「不登校ビジネス」というキーワードで検索すれば、ずいぶん多くの人が懸念や疑問を込めてそれを論じていることがわかるでしょう。

札幌市内のフリースクールはここ数年で急速に増えました。中には規模が大きく立派な設備を持ったフリースクールもあり、そうしたところはビジネス的に成功を収めつつあると言ってよいのでしょう。一方で、放課後等デイサービスを利用する子どもたちが不登校となり、放課後を待たずに午前中からオープンしてフリースクール的に子どもたちを受け入れるようになったという話もいくつか耳にしました。これもまた意義の大きいことだと思います。敢えて言えば、そうした企業・団体との「競争」において、ここ数年のフリースクール札幌自由が丘学園は引き離されつつあります。集まってくる子どもたちは、今も昔も明るくのびやかに自分自身をぶつけてくれる私たちにとって心底大切な人々ですが、その人数は少しずつ減ってきています。

 

しかし、NPO法人である私たちフリースクール札幌自由が丘学園には、そうした競争にはなじまない使命があると考えています。それは「社会課題を解決する」という立場です。不登校によって求める学びに触れられなくなった、人とつながる機会が少なくなった、自己を否定するようになった、そんな子どもたちの悩みに応えること。フォーラムや学校教員との交流などを通じて望ましい教育のあり方を模索すること。大学生の実習を数多く受け入れて不登校について体感的に理解を深めてもらうこと。どれも「子どもたちが元気に生きられる社会をつくる」というミッションを実現するための取り組みです。

企業であれば、売り上げが減れば価格を上げたり不採算部門をカットしたりといった対策をとるでしょう。実際、札幌自由が丘学園の授業料は運営維持のためにギリギリの金額です。しかし生活実感から言えば、月に3万円以上・プラス昼食代や交通費というのは決して気軽に払える額でもないと思います。授業料を上げる選択肢は今のところ考えていません。

個人的に正直な思いを述べれば、いつも皆様の善意に支えられて運営していることに心苦しさがないとは言えません。それでも、先に紹介した内田樹氏の著書からこんな言葉を引いて、皆様のご支援を心からお願い申し上げます。(内田氏はここで大学について論じていますが、フリースクールにも同じことが言えると私は思います)

 

「学校は営利企業ではありません。利益を上げるために出資者を募って始めたわけではない。それよりは、もともと『利益が上がらない』ものだと思った方がいい。『いろいろな人からのご支援』を得て、かろうじて成り立つものだと考える方がいい。(中略)この場合の『ご支援』というのは『出資』とは違います。確実な配当をめざしての『ご支援』なんか大学は集められません。申し訳ないですけれど、これは先方の『持ち出し』になります。でも、それは出したものとは違ったかたちでいつか戻されるはずです。」

 

最後に、卒業生の皆さんもこの文章を読んでくれているかもしれませんね。元気ですか? フリースクールの経営は少々大変だけど、シンドウは何とか元気でやっています。寄付のお願いの話、何だか不甲斐ないなとも思ってしまいます。それでも、もしいま少し余裕があればぜひよろしくお願いします。余裕がなければ無理しないでください。お金じゃなくても、たとえば久々に遊びに来て話を聞かせてくれるとかでも嬉しいです。とにかく楽しく過ごしていることを願っています。

(今の住所がわかる人がだんだん限られてきました。今でも連絡がつく友だちがいたら、念のため情報拡散してくれると助かります!)



寄付サイトはこちらです
https://syncable.biz/associate/sapporojg/donate

(2024/2/20)

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