2015 年 7 月 7 日

フリースクールのつくりかた

高村さとみ

 2年前に漂流教室の相馬さんが「フリースクールのスターターキットをつくりたい」と話していたことがある。先日、苫小牧フリースクール検討委員会が主催する「不登校について語りませんか」に参加して、いろんな参加者の声を聞くうちにスターターキットのあるべき姿が浮かんできたので、今回はその話を。

 苫小牧フリースクール検討委員会は、若者支援を仕事にしている人、不登校の元当事者や保護者が集い、苫小牧にもフリースクールをつくれないかと1年程前から話し合いを重ねている。苫小牧には市が運営する適応指導教室はあるもののフリースクールや親の会はない。適応指導教室が合わなくて...という子どもの選択肢のためにはやはりフリースクールはあった方が良いとは思う。実は最近、苫小牧だけでなく道内の数地域からも「フリースクールをつくりたい」という声があがっているのだ。

 しかしいざフリースクールをつくりたいと思っても、リスクの方が先に頭に浮かぶ。利用者は本当に来るのか。家賃や人件費をどう工面するのか。特に経済的なリスクは大きい。今現在フリースクールを運営している団体でも、経済的余裕のあるところなどないのだから。また、不登校といっても適応指導教室やフリースクールを利用していない子どもの方が圧倒的に多い。どのようなプログラムや形態が不登校の子どもにとって利用しやすいかなんてわからないのだ。強いていえばいろいろなプログラム・形態のフリースクールがあればあるほど子どもの選択肢が増えて良い。

 結論から言うとフリースクールのスターターキットはつくれない。運営がまわるような計画をつくるには家賃がいらない・人件費を削るなどの「特別条件」が必要であって、どこでも誰でも当てはまるようなキットとはいかないのだ。フリースクールをつくるには上記のリスクを超えるぐらいの思い切りが必要なのである。

 しかし、親の会であればどうか。というのが今回の苫小牧で見えてきたことである。親の会は、不登校の子どもを持つ保護者、保護者OBOG、不登校について話したい人等々がいれば成り立つ。場所は誰かの自宅でもいいし、月に一度どこかのカフェに集まってもいい。親が楽しそうにしていると、子どもが一緒についてくるときがあるかもしれない。焼肉やカラオケなんかの子どもが好きそうなプログラムを入れたっていい。定期的に行えば、子どもも親の会の時間が楽しみになるかもしれない。そこで友人を見つけるかもしれない。これはもう「フリースクール」といえるものである。ある程度の人数が集まり、子どもからの要望があれば会の回数を増やし、プログラムを考え...と発展させていける。実際にこのようにやっている親の会はあるのだ。このような考えを元に親の会のスターターキットをつくるとしたら...

・賛同する人が2人以上いる
・定期的な開催
・場所は自宅やカフェ、市民会館などを利用
・(大人にとっても)楽しいことをする

 こんなところだろうか。欲をいえば場所に関してはもっと地域の協力者がいてもよいと思う。店や施設で、使っていない時間帯に場所を無料で貸してくれるところ。例えば土日休みの福祉施設。例えば夜だけお客さんが入るごはん屋。そんなところが協力してくれるとよい。フリースクールをメインでやっていくのは難しいが、何かの片手間に子どもや親が集まれる場所をつくる、そんなところは地域に増えていってほしいところだ。