2024 年 7 月 1 日

作る・食べる・生きる

 


フリースクール札幌自由が丘学園理事 新藤 理

 

生徒たちとお弁当を作った。いろいろなおかずを少しずつ作って食べたいものを弁当箱に詰めるバイキング形式。2時間でなんと15品目を完成させた。ボランティアスタッフや実習生のみなさんのお手伝いがあったとはいえ、10人ほどの生徒たちで一気に作りあげたのは大したものだと思う。どれを食べてもおいしいおいしいと、15品目すべてを詰めこむ生徒も少なくなかった。

 

20年ほど前、初めての一人暮らしのころを思い出す。半ば強引に実家を出てアパート暮らしを始めたある日、夜の22時からカレーを作りだした。近ごろ流行の無水スパイスカレーだ。レシピを見ずにほとんどひらめきだけで作ったそのカレーが完成したのはもう真夜中だったけど、たくさんの具材から出た旨味にスパイスの複雑な香りが絡んで、それはそれはおいしかった。24時過ぎ、大皿でカレーをかっこみながら、「今、自分で自分を『生きさせている』なあ」としみじみ思ったことを今でも覚えている。

もちろん家事は料理だけではなくて生活全般におよぶので、片付けが苦手なシンドウのその後の一人暮らしはなかなか大変でもあった。でも、あのカレーを作って食べた時の感覚は、今でもずっと「なんとか生きてはいけるよな」という自信として残っている。気づけば時は流れて、自ら築いた家庭で家族の食事を作ることが日課になっていた。

そう、なんとか生きてはいけるんだよなあ。生徒たちもこの学園でそんな気持ちに出会って、そのままそれを携えて生きていってくれればと思う。

 

そんなわけで、先日のお弁当づくりの時は「フライパン一つでできるカルボナーラ」や「レンジにかけて混ぜるだけのナムル」など、できるだけ簡単なレシピを揃えるようにした。毎日2時間以上かけてカレーを作っているのでは、楽しくてもちょっと息切れしてしまいますからね。