2016 年 10 月 21 日

1杯の味噌汁

                                        三和高校 渡辺 莉卯

10月に入ってからすっかり肌寒くなったのもあり、最近では温かいものが食べたくてたまらない日が多くなった。おでんにラーメン、コンビニの肉まんなど帰り道は誘惑に溢れているという風に感じるのは、きっと生徒たちも同じだろう。たまに誘惑に負けてしまうのは私だけではないはずだ、と思いたい。

さて、寒い季節になると特に、我が家では毎日のように味噌汁が食卓に並ぶ。ワカメや豆腐、大根や人参といった野菜などその日によって様々な具材を味わうのが、私の密かな楽しみにもなっている。

「味噌汁」に、私はこんなエピソードがある。

高校時代のちょうどこの時期、私は3週間カナダのバンクーバーに留学していた。街の飾り付けはハロウィン一色で、ジャック・オウ・ランタンや魔女などお化けをモチーフにした色とりどりのお菓子やグッズが店頭に並び、見ているだけで楽しい気分にさせられた。ホームステイ先でカナダの家庭料理や、サーモンなどの海の味覚も味わえたことも、私にとって大切な思い出である。

そして帰国後、家に帰ると「お腹がすいたでしょ。」と母がおにぎりと1杯の味噌汁を用意してくれていた。久しぶりの日本食に、私はこの時ひどく感動したのを覚えている。
お味噌が香る湯気が鼻の先をかすり、お出しがきいた温かい味が喉を通る。疲れた身体に染み渡るような温かいジンワリとした感覚がとても心地よく、「帰ってきたんだなぁ・・。」としみじみと実感できた。大人になった今でも、味噌汁は私の大好物の1つだ。

昨日、札幌では初雪が観測された。
早くも冬の気配が見え隠れしていると感じ、今後もますますあの誘惑に負けることが増えてくる予感がする。でもあの誘惑に耐えながら早く家に帰れば、あの1杯の味噌汁が待っている。そう思えば、この寒さもなんとか乗り越えられるような気がするのだ。