このステージは「ブル部の証」
新藤理
定期演奏会が終わった。演奏会のことを思い出そうとすると、それまでの練習と準備の日々が連なって思い出される。そして、定期演奏会への本格的な取り組みの始まりは9月の円山合宿だった、と記憶がよみがえってくる。
合宿の夜、ブラスアンサンブル部のメンバーみんなで就寝前のミーティングを行った。「ブル部に入って自分のどこが変わったのか」「今年のブル部に何を想うか」、そんなことを全員が時間をかけて語ってくれた。まだまだ終わりは見えていないのに、なんだかみんなとてもしみじみしていた。あくまで人生のうちの通過点のひとつに過ぎない部活の時間だけど、そこには家族のような親密さと安らぎがあって、私ですらずっとこんな時間が続いていくんじゃないかと錯覚しそうなくらいだ。でも、この日々には必ずそれぞれの終わりがある。だからこそ輝く時間なんだということも、部員たちはよくわかっている。
最後の定期演奏会を終えた高校3年生が泣いている。これまで何度も見てきた彼らの悔し涙は、それはそれでとても美しいものだった。でも、今日の涙は感動の涙、そして寂しさの涙。そのまぶしさは言葉にはできない。
たった90分のステージの中で、それを成り立たせるための長い日々の中で、部員たちは本当によくがんばった。悔いの残るステージには絶対にしたくない…彼らのそんな思いがいつでも強烈に伝わってきて、私はそれに支えられながら指導を続けてきた。練習量も多くはないし、技術的にもまだまだ。でも、彼らはそんな自分たちの音楽を愛し、もっともっと育てたいと願っている。私にはそれが、自分たちの存在そのものへの思いに重なっているように見えた。彼らにとって、このブル部の演奏は、そしてこのステージは、自分たちの証なのだ。
演奏会を終えて、一緒に音楽をやっている友人からメールをいただいた。
「みんな楽しそうに、そして一生懸命演奏していて、
しばらく音楽から離れている人は再度楽器がやりたくなるような、
そして現在楽器に携わっている人は楽器を演奏してて楽しくて楽しくてしょうがなかったあの頃を思い出す、とっても良い演奏会でした。
聴きに行ってよかったです」
音楽には、思いがけないほど多くの人に共有されて広がっていく独特の力がある。
ブル部のみんな。みんなの小さな演奏会は、自分たちで思っている以上に大きかったのかもしれないよ。
そしてブル部はしばしのお休みに入る…こともなく、今度は北海道女子学生会館のクリスマスパーティーへの出張演奏に向けて新曲を練習し始めている。楽しいクリスマスソングにみんなの目が輝いている。
音楽を愛する人がいるかぎり音楽は続いていく。これじゃ疲れているヒマがないね!
カテゴリー: スタッフエッセイ
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