故郷の車窓から
及川 かおり
実家がある旭川に帰る度、車窓からの景色をしみじみ眺めながら「いい所で育ったなぁ」と大げさに感動してしまう。大きな観光地でも産業都市でもない。でもどこか、流行り廃りにはびくともしない、本物の文化の香りがする。街を見守る大雪連邦や、石狩川の清流、豊かな自然に抱かれて人々の営みがある。
でも10代の頃はまだ、故郷の素晴らしさを見ることはできなかった。世の中に取り残されたような小さな街、新しい物も皆無に見えた。気候は厳しく、冬は零下20度、夏は無風で30度を越える。高校生になると、ここではない別の世界を見てみたいと毎日考えていた。もっと広い世界、もっと違う価値観、そこでは何ができるだろうと。
いざひとり広い世界に出てみると、沢山の出会いと新しい刺激の中で、素晴らしい体験も、失敗からの学びも、両方がひっきりなしに訪れた。大きな失敗をした時には、それまでどんなに家族や地域の温かい目に守られていたか、初めて気がつく。何か1つでもやり遂げられた時には、あんなに離れたかった両親にいつも電話していた。自由が欲しかった青年期、振り返って見れば、ひとりでは何ひとつできていない。
振り返って見れば、私が傷つくことを心配しながらも、平和で温かな故郷から送り出してくれた家族がいる。どんなにいい事も悪い事も、私が自ら自分の足で歩いて出会うように、離れて見守ってくれた両親がいる。
そして今札幌で暮らす私には、支えてくれる友人がいる。あきらめずに導いてくれる人たちがいる。そして毎日笑顔を見せてくれる、自由が丘の子どもたちがいる。広い世界での多くの出会いに、目に見えない心の絆が確かにあると日々教えられている。それをこの目で見させてもらえる毎日に、ありがとうの気持ちを忘れずにいたい。
カテゴリー: スタッフエッセイ
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