ご先祖さまと白いメシ
札幌自由が丘学園三和高等学校校長 亀貝一義
かつてアレックス・ヘイリーという人が自分の先祖を探すという活動を行いました。ルーツ探しということで話題になりました。また彼はこの活動を「ルーツ」という本にまとめて(1976)かなり多くの人たちに読まれています。彼の先祖はアフリカで平和な暮らしをしていたのに、奴隷狩りに逢い、アメリカ大陸に若い奴隷として連れてこられました。
日本でも多くの人がこれを読んで自分の先祖に関心をもったことがあります。私もそのひとりでしたが、あまりヒマもカネもなかったので、ほとんど「先祖捜し」はしていません。しかし、わが遠い親戚の中で興味・関心のある人がいていろいろ調べてくれました。
先祖といっても、父の方をさぐるか、母の方に重点を置くかによって、全く異なった先祖が見つかります。私の場合には母方をメモしてみましょう。
母方の先祖(大瀬という氏)は新潟市の近くで暮らしていたのですが、明治29(1896)年からの水害(信濃川)のために、そこで農業をつづけることができなくなり、なけなしのカネを払って北海道にわたってきました。この時に必要とした金額は100円だったとのことです。今のカネになおすと300万円ぐらいになるといいます。
まずたどり着いたのは、今は札幌市北区の篠路でした。ここでやはり農業(藍をつくったりしたらしい)をやっていましたが、明治36(1903)年に和寒に移りました。今、和寒で農業を行っている主人の3代前です。明治32(1899)年に、鉄道(宗谷本線)が和寒まで通じたこともあって、遠国ではない感がしてきたのだと思います。ただそこですぐ米作りをしたのではないと思います。和寒でようやく米づくりに成功したのは明治40(1907)年だったとのこと。だからといってみんなが白いごはんを腹一杯食べることができたかと言えば全くそうではなかったと思います。私のおじいちゃんが昭和21年ごろだったと思いますが、「おまえたちが不自由なく白いメシを食べられたらいいのに」という意味のことを語っていたことをかすかに覚えています。だから「白いメシ」を腹一杯食べることができるようになったのはそんなに昔ではなかったのです。せいぜいこの70年前ころからだったと思います。
「先祖」がどういう歩みをして今の自分がここにいるのか、を知ることは人間の大きな活躍の足跡をたどることになりますし、たくさんの人たちとのつながりを確認することにもなります。
今、ここにいる皆さんがたも、父母や祖父母、さらにその前の先祖がどこから来てどういう苦労を経て今の自分に至っているのかを、ちょっとだけ興味をもって考えてみて欲しいな、と思いました。
カテゴリー: スタッフエッセイ
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