2011 年 12 月 27 日

パチンコと就労

小田将弘

激動の一年も残りあと数日となり、今年も残すところあとわずかです。 さて、年末年始はこちらの学園も冬休みに入り、職員もお休みをいただくのですが、私個人としては、この冬休みは一回ぐらいパチンコに行ってみようと思っております。

本来私はギャンブルは苦手でダメなんですが、今はパチンコがやりたい。早く休みが来ないかとウズウズしている次第。


YOUスペースにはいろいろな人がおりまして、中にはパチンコ好きという人もおります。
彼はこの一年ほどこちらに来ているのですが、うちではスタッフも含め、誰もパチンコをやる人がいないので、彼がパチンコの話をしたくても話す相手がおらず、彼の話しはみんなチンプンカンプンでありました。

ちなみに彼は全盲なのですが、どういうわけか昔からパチンコ好きで、とにかく一人だけやたらと詳しいわけです。ここではAさんとしておきます。

Aさんにはここ半年ぐらい、何度かプログラムの中でパチンコの話をしてくれとお願いしました。

彼もまんざらではないようでしたが、「みんながどの程度パチンコについてわからないのか」がわからず、彼なりにプレゼンを何度かしてくれましたが、結局、もっとすごい初歩的なことがわからないんだよね、、、ということでモヤモヤした状態が続いておりました。

11月くらいに、ちょっと、すごい根本から聞いていい?と私の方からものすごい初歩的なことから質問してみました。
・まずパチンコ屋に入ったら何をすればいいのか、どこに行けばいいのか?
・台に座ったら何をすればいいのか?
・「CR」ってよく聞くけど何?
・どこに球を入れればいいのか? などなど

彼としては、「え?そこから?」って感じだったのかもしれませんが、その場にいた私を含めた全員が、「そこから」わからなかったんです。

結局、そのへんの質問に順番に答えてもらったところで、長年のモヤモヤが徐々に晴れ、おー、なるほどぉ!そういうことだったのか!と私の頭はすっきりしてきました。今パチンコ屋に行ったら、どうすればいいか、わかるぞ!と。


YOUスペースは若者支援を行なっており、日々若者を次のステップにつなげようとしているのですが、なかなか次のステップに進まなかったり躊躇したり、そもそも進みたいのかどうかわからないという人もいます。

今回のパチンコの件で、私はひとつ確信したのですが、つまり、「知が道を拓く」ということです。
人は、ほとんどみんな、わからなければ不安だし、知らないことに関しては興味も示さない。
「何をやりたい?」「どうしたい?」の前に、「やりたいもやりたくないもわからない」わけです。

パチンコで言えば、何も知らない状況では、北斗の拳をやりたいのか、海物語をやりたいのかではなく、そもそもやりたいもやりたくないも無い。無の状態。パチンコ自体に関心がないわけです。

そこに、非常に根本的で初歩的で誰も教えてくれないけど常識的な知識が入ると、「ちょっとやってみようかな」とか、「もしやったとしても、初歩的なことはだいたいわかる」という自信を持つことができ、そこでようやく、例えばこの場合、「就労」に向けての活動や、それをバックアップする支援というものが発生してくるのではないでしょうか。

そういった非常に重要だが原初的なことを疎かにして、若者支援も就労支援も無いのではないかということです。

「学ぶ」「学習する」ということは人間にとって非常に不可欠なことであり、「知る喜び」というのものは、誰にでもあるものです。
いくつになっても「新しいことを知る」とか、「わからなかったことが分かる」というのは嬉しいものであります。
混迷の現代において、幸せとはこういったことなんじゃないかとも思います。(お金とか名声ではなく)


我々札幌自由が丘学園は教育機関であります。
教育機関である以上、生徒や利用者たちに、「知るということの楽しさ」や「わからなかったことがわかることの喜び」、そして「知ることによって道が拓ける」ということを教えなくてはならないのではないでしょうか。

3月には中学3年生のフリースクール生はフリースクールを、高校3年生は高校を卒業します。
他所の学校へ行ったり、社会へ出ても、迷ったら勉強することで、「どんな時代なのか」「世の中はどう動いているのか」「自分がどこにいるのか」がわかると、少し安心できるということを教えなくてはならないのではないでしょうか。

もうすぐ新しい年が来ます。私たちはそういったことを生徒や利用者に教えているかどうかを考えながら、さらにより良い学園を作っていくべきではないかと思っております。

どうぞ、来年以降もよろしくお願いいたします。


というわけで、さぁて、ひとまず明後日はどこのパチ屋に行こうかなぁ。。