2012 年 11 月 21 日

Imagine

フリースクールスタッフ 新藤理

 平和を願い、愛あふれる世界を願って歌われたジョン・レノンの名曲、「イマジン」。しかし、2001年の同時多発テロ事件以降、アメリカでは放送が自粛されていたこともあったそうだ。はっきりとした理由は知らないけど、たとえば歌詞中のこんな一部分が問題になったのかもしれない。

Imagine theres no countries  It isnt hard to do
Nothing to kill or die for  And no religion too

(想像してごらん 国家というものはないのだと
 難しいことじゃないよ
 殺すべき理由も 死ぬべき理由もない
 そして宗教だって存在しない)

 対立する他国から攻撃を受け、祖国への思いに心を燃やす人から見れば、その歌詞は皮肉なものに映るだろう。でも、それだけこの歌詞のメッセージは鋭く深いということでもある。発表から40年以上が過ぎた今でも、世界から戦火が絶えることはない。この歌が歌われ続けることには大きな意味があると私は思う。

 先日のフリースクールの音楽の時間、みんなでギターを抱えて「イマジン」を練習した。この時間に初めてギターにさわる生徒も少なくなかったので、まずみんなで弾くコードは「CM7(シー・メジャーセブン)」の一つだけ。押さえ方の難しいコードは、ギターに慣れ始めた何人かの男子が頼もしく鳴らしてくれる。英語の歌詞はやはり口に出すのが難しく、大きな歌声はあがらなかったけど、「ちゃんと歌えるようになればカッコいいよなぁ~」とつぶやく子もいた。
 「カッコいい」で十分。歌詞に込められたメッセージを私は説明するけど、そこに共感もあれば批判もあり得るだろう。少しずつ理解し、自らの考えに沿わない部分は批判的に読み込んだってかまわない。ただ、こうした強い力を持つ歌が存在すること、そうした歌を持って抗わなければならない痛烈な世界の現実があることを、少しだけ意識してくれればそれでいい。


 フリースクールの子どもたちは、今日もそれぞれ無心に好きな歌を歌って過ごしている。ちょっと調子っぱずれなこともあるけど、なんて平和な歌声だろう。その響きこそ私の大切な「人生の歌」だ…と言えば、ちょっと大げさに聞こえるかもしれないけど、やっぱりそう思う。