2017 年 6 月 13 日

ワーカーズ・コレクティブという働き方

高村さとみ

 先日、ワーカーズ・コレクティブについて話を聞く機会があった。ワーカーズ・コレクティブとは参加者が出資・経営・サービスの提供全てに関わるという働き方である。話を聞いていて、フリースクールに通じるものがあると感じた。
 ワーカーズは全員が経営者であり、運営については話し合いで決めるという。以前スタッフブログにも、フリースクールのミーティングについて書いた。多くのフリースクールが、フリースクールの活動や新たな提案についてスタッフ・利用者が同等の立場で話し合いをして決めている。札幌自由が丘学園も生活のルールを生徒との話し合いにより決めている。前年度のルールと比較して、修正したいことや追加したいことを話し合う。先日ワーカーズについて話をした人は、働き方への賛同というより働く場所を求めて勤め始めたので、そのやり方に戸惑うことが多かったそうだ。入ったばかりの自分に「何かやりたいことはあるか」と聞かれ驚いたり、長引く話し合いにトップの人が決めるやり方の方が楽だと思うこともあったという。前にも書いたが今の学校や会社では自分で意見を出せる範囲は限られている。校則は入学したときから守るものとして存在しているし、(規模にもよるが)一社員が経営方針に口を出せるものではないだろう。私はすっかりNPOやフリースクールのやり方に慣れてしまったが、「自分で変えることができる」という経験は今の社会ではあまりできない。
 だが、それでいいのだろうか。与えられることは確かに楽ではある。ワーカーズでは団体の収入が分配金としてそれぞれに分配される。団体の収入が少なければ当然、各自の収入も少なくなる。また、元々利益をあげることではなく地域に必要なことを地域で補うことを目的としている。それでもニーズを掘り起こして利益をあげる団体はあるが、ワーカーズの勤めで生活を成り立たせることは難しい。自然と主婦の参加が多くなるが、夫婦共働きが主流となりつつある現代では組織づくりが難しくなっていくだろう。ワーカーズの働き方は課題も多い。しかし、話をした人は最初はそのやり方に戸惑いつつも10数年続けているのである。「自分で変えることができる」ことにはそれだけの魅力があるにちがいない。私は話を聞いていて、もっと貪欲に地域のニーズに応えつつも利益を考え、ワーカーズの魅力をアピールしていく人がいてもいいのではと思った。
 経営の難しさについては他人事ではないと胃が痛みつつも、フリースクールに似ているからかワーカーズの働き方は私にとっても魅力的に映るのである。