2015 年 3 月 5 日

とりあえず口に出してみる

高村 さとみ

 昔々、私が高校生向け教材販売の営業をしていたころのお話。「ビンスパ」という用語がありました。先輩から初めてこの用語を聞いた時、スパゲッティサラダの一種かとのんきに想像していましたが、よくよく聞いてみるとそれは「貧乏スパイラル」の略語なのでした。貧しい家庭で育つと教育にお金をかけることができないのでその子どももまた貧乏になる、という意味です。明け透けな物言いですが、当時職場で話されていたことをそのままに書きました。また、飛び込み営業で市内のいろいろな地域をまわるので、地域事情も情報交換していました。「あの地域は生活保護世帯が多い」「あの団地は母子家庭が多い」(ので、契約が成立しづらい)などなど。

 その後、フリースクールに勤めるようになると、決して安くはない授業料を払ってフリースクールを利用する家庭、しかも厳しい経済状況の中何とか授業料を出して子どもをフリースクールへ通わせる家庭を見るようになりました。言わずもがな団体の運営も厳しい。

 フリースクールに勤めて丸5年。4月からは6年目。この状況は変わらないどころか年々悪くなっているように感じます。悪い意味で、今は貧困ブームかといえるほどにあちこちで貧困の話を見聞きします。数年前までは子どもに何か課題でもあるとすぐに発達障害の話が出ていましたが(それもどうかと思いますが)、それと同じように今は貧困につながっていくのです。犬も歩けば棒にあたるのリズムで、高村が出会えば貧困につながる。母子家庭、生活保護世帯、不登校、引きこもり、非行、ニート...etc、こうした子ども若者に対して学習や就職、居場所支援をする団体と出会ってきましたが、根っこで共通となるテーマが貧困なのです。

 その人ただ一人の課題であれば、それはその人の課題だと言うことができるかもしれません。しかし、同じ課題を持つ人が複数人いたならば、それはもはやその人の課題ではなく社会の課題であると私は思っています。こうした社会的な課題も「自己責任」として片づけてしまわれがちな風潮は本当に残念です。各団体それぞれががんばっていても埒があかないとも気づいてきました。社会的課題を訴えていくには複数でまとまって声をあげるのが定石です。

 さて、話が長くなりましたが実はこれらはすべて前ふりです。今年、子どもの貧困をテーマとしたイベントを何かしたいと個人的には思っています。ちなみに子どもの貧困は「貧困により何かしらの困難を抱える子ども」の要約ぐらいに考えています。ただ、これをテーマにするには私がまず貧困についてもっと学ぶべきであるし、社会に訴えていくイベントにするならいろんな団体の協力が不可欠だし、それならそれらの団体でネットワークを組むべきだろうかなどなど始める前から想像が壮大になりすぎて尻込みしているようなところもあります。ただ、いろんなところでこのように「イベントやりたいなー」と口に出しておいてみると賛同者があらわれる気がして。あと私自身にも「やらなきゃ」と暗示がかかる気がして。とりあえず口に出せば叶うのかもしれない。どなたかよろしくお願いします。